「Zoomが固まる」「YouTubeが480pになる」「原因が分からずストレス」「回線を変えて失敗したくない」――こうした悩みを、科学的根拠と実測値で解決します。回線を変える前に、まず原因を特定しましょう。
なぜマンションの回線は遅くなるのか
マンションの回線が遅い理由は、1つではありません。複数の要因が重なっています。まず全体像を理解することで、あなたの状況に最適な対策が見えてきます。
①複数世帯で回線を共有している
マンションの光回線は、建物全体で1本(または数本)の回線を複数の世帯で分け合う仕組みです。戸建てが「専用道路」だとすると、マンションは「共有道路」。
特に20時~24時は全国的にインターネット利用が集中します。総務省の通信トラフィック調査によれば、夜間(20~23時)のトラフィックは昼間の1.5~2倍に達することが確認されています。
②インターネットは「ベストエフォート型」サービス
契約書に「100Mbps」と書いてあっても、それは「最大値」です。総務省の公式説明では、インターネットサービスはベストエフォート型であり、速度は保証されません。
出典:総務省 通信FAQ
③建物の配線方式が速度を制限する
マンションの速度が遅い最大の原因の1つが、建物の配線方式です。同じ「光回線」でも、建物内のケーブルがどの規格かで、速度の上限が大きく変わります。
| 配線方式 | 最大速度 | 特徴 | 改善余地 |
|---|---|---|---|
| 光配線方式 | 最大1Gbps | 建物の共有部から各部屋まで光ファイバーケーブルが来ている | 改善の余地あり(プロバイダ変更などで改善可) |
| LAN配線方式 | 最大1Gbps | 建物のLANケーブル(CAT5eなど)が各部屋に来ている | ケーブル規格次第(CAT6なら改善可) |
| VDSL方式 | 最大100Mbps | 建物まで光、部屋内は電話線で接続 | 改善困難(最大100Mbps以上は不可) |
まず確認すべき5つのチェック項目
遅さの原因は、あなたの設定ミスの場合もあれば、建物構造が原因の場合もあります。10分のチェックで、どちらかを判断しましょう。
チェック①:速度測定の正しい方法
まずは現在の実測値を知ることが出発点です。ただし、測定方法を間違うと、本来の速度が出ません。
🔍 正しい速度測定の手順
Wi-Fiではなく有線で測る理由
Wi-Fiは便利ですが、速度測定に向きません。理由は以下の通り:
- 干渉の影響:隣近所のWi-Fi、Bluetooth機器との電波干渉で実測が低下
- 距離による減衰:ルーターから遠いと速度が大幅低下
- ルーター性能の影響:古いWi-Fi機器が足かせになる可能性
有線接続なら、回線の真の速度が分かります。
チェック②:用途別「快適ライン」を知る
実測値が出たら、それが快適なレベルかどうかを判定します。用途別の必要速度目安は以下:
| 用途 | 必要な速度 | あなたの実測値 |
|---|---|---|
| メール・SNS閲覧 | 1~3Mbps | ◇記入例:30Mbps ✅ |
| YouTubeフル1080p | 5~10Mbps | ◇記入欄 |
| Zoom(標準画質) | 3~4Mbps | ◇記入欄 |
| オンラインゲーム(FPS) | 20~30Mbps + Ping値20ms以下 | ◇記入欄 |
| 4K動画ストリーミング | 25~50Mbps | ◇記入欄 |
チェック③:建物の配線方式を確認
マンション管理会社または大家さんに以下の質問を。(メール・電話で大丈夫)
📞 管理会社への確認テンプレート
「お世話になります。インターネット回線について、以下を確認したいのですが教えてもらえますか?」
この情報で、あなたの遅さが「個人で改善可能」か「建物構造による制限」かが分かります。
チェック④:ルーターの状態を確認
古いルーター・不適切な設置場所も、遅さの原因になります。
ルーター・設置のチェックリスト
チェック⑤:プロバイダの確認
同じ回線でも、プロバイダが異なると速度が変わります。現在の契約を確認してください。
あなたの遅さはどのタイプ?原因診断フロー
上記5つのチェック結果を踏まえて、あなたの遅さの原因を診断します。
実測値はいくつでしたか?
有線で測定した値
【30Mbps以上の場合】
結論:速度は十分です。問題は設定・機器・Wi-Fi干渉の可能性が高い。→ 改善策①②を試す(ルーター設定・Wi-Fi改善)
【10~30Mbps の場合】
結論:中程度の遅さ。配線方式とプロバイダを確認が必須。
- VDSL方式なら:これ以上改善は難しい。ホームルーター検討
- 光配線/LAN方式なら:IPv6対応プロバイダへの変更で改善の可能性あり
【10Mbps以下の場合】
結論:回線変更を強く推奨。現在のプロバイダ・回線タイプでは限界。
- VDSL方式 → ホームルーター(au ホームルーター 5G / SoftBank Air など)を検討
- 光配線/LAN方式 → IPv6対応の別プロバイダか、別の光回線(auひかり / NURO光など)を検討
夜だけ遅い本当の理由
「昼間は速いのに、夜20時~24時だけ極端に遅くなる」という相談は非常に多いです。その理由は、複数の要因が夜間に重なるためです。
全国のトラフィックが集中する
日本全体のインターネット利用量は、時間帯によって大きく変動します。
| 時間帯 | トラフィック(相対値) | 理由 |
|---|---|---|
| 6時~10時(朝) | 低~中 | 出勤・通学準備で忙しい |
| 11時~17時(昼間) | 低~中 | 仕事・学校で利用が少ない |
| 18時~21時(夜間前半) | 高 | 帰宅後、動画視聴・ゲーム開始 |
| 20時~23時(夜間ピーク) | 最高(昼間の1.5~2倍) | 国民全体がネット利用のゴールデンタイム |
マンションの共有回線が飽和する
マンション全体で1本の回線を共有しているため、以下のシーン
で特に遅くなります:
- 新築マンション:全世帯が同時に利用する傾向が強い
- 大型物件(100戸以上):1回線を大人数で分け合うため限界に達しやすい
- ファミリー向けマンション:子どもが帰宅後、動画・ゲーム利用が増加
バックボーンネットワークも混雑する
さらに複雑なのが、マンション内だけでなく、ISP(インターネットサービスプロバイダ)のネットワークも夜間に混雑するということ。
古い「PPPoE接続方式」を使うプロバイダは、夜間に渋滞が起こりやすくなります。これを解決するのが「IPv6/IPoE対応プロバイダ」です。(詳しくは次章で説明)
改善策を費用順で解説
遅さを改善する方法は、複数あります。費用が低い順で試していくことをお勧めします。
改善策①:ルーター設定と設置場所の改善(0円)
費用:0円 | 効果期待度:★★☆☆☆
意外と効果的なのが、ルーターの設置と設定の改善です。以下を試してみてください。
🔧 実施項目
📌 注意:これらの対策は、回線そのものの速度を上げるわけではなく、ルーターのパフォーマンスを引き出すための調整です。
改善策②:LANケーブル規格のアップグレード(1,000~3,000円)
費用:1,000~3,000円 | 効果期待度:★★☆☆☆
あなたのマンションが「LAN配線方式」の場合、古い「CAT5e」ケーブルが足かせになっている可能性があります。確認方法:
- 新しいCAT6またはCAT6A対応のLANケーブルを購入(1,500~3,000円)
- ルーターとパソコンを直結して速度測定
- 速度が改善すれば、配線が原因だった
建物全体の配線を変える場合:管理会社に相談が必要で、費用は数万円~十万円単位になる可能性があります。優先度は低めです。
改善策③:IPv6(IPoE)対応プロバイダへの変更(0~2,000円/月額変更)
費用:プロバイダ変更手数料数千円 | 効果期待度:★★★★☆
これが最も効果的な改善策の1つです。
そもそもIPv6とは何か?
従来のIPv4では、ISPの混雑したゲートウェイ(PPPoE)を通す必要があります。一方、IPv6/IPoE方式は、この混雑を迂回する最新の接続方式です。
出典:NTT「v6プラス / IPv6 IPoE」公式説明 | IETF RFC8200(IPv6仕様)
IPv6対応プロバイダの具体例
フレッツ光を利用している場合、以下のいずれかに変更すると改善の可能性が高い:
- GMOとくとくBB(v6プラス対応)
- IIJmio(IPoE対応)
- So-net(v6プラス対応)
- OCN(IPoE対応)
変更方法:現在のプロバイダを解約(手数料あり)→ 新プロバイダと契約。オンラインで5分で完結し、数日以内に接続可能です。
改善策④:ホームルーター導入(2,000~4,000円/月)
費用:2,000~4,000円/月 | 効果期待度:★★★★☆
マンション回線がどうしても改善しない場合の切り札が、「ホームルーター」です。光回線ではなく、モバイル回線(5G / 4G LTE)を使ったWi-Fiルーターです。
ホームルーターの特徴
| 項目 | ホームルーター | 光回線 |
|---|---|---|
| 工事不要 | ◯(コンセント差すだけ) | △(工事必要な場合多い) |
| 速度(理想値) | 100~300Mbps | 500Mbps~1Gbps |
| 実測値(夜間) | 30~80Mbps | 10~50Mbps(マンションの場合) |
| 月額費用 | 2,500~4,000円 | 3,500~5,500円 |
| 契約期間 | 2年(途中解約金あり) | 2~3年 |
メリット:工事不要で、即導入可能。マンション回線の制約を受けないため、現実的な速度改善が期待できます。
デメリット:モバイル回線のため、電波状況に依存。データ無制限の場合もあるが、提供事業者による差あり。
改善策⑤:光回線の全面切り替え(月額差 ±1,000円)
費用:初期工事費(あり / なし) | 効果期待度:★★★☆☆
現在のNTT光(フレッツ光)から、別の光回線に乗り換える方法も検討する価値があります。特に大型マンションの場合。
別光回線のメリット
- 独立した回線:NTT光と異なる光ファイバーで来ているため、マンション内の混雑をある程度回避できる可能性
- 提供開始:auひかり・NURO光など、提供事業者によってプロバイダの混雑度が異なる
デメリット・注意点:
- 工事必要:賃貸物件の場合、管理会社許可が必要
- 速度改善は保証されない:マンション全体の混雑が原因の場合、別回線でも改善しないケースあり
- VDSL建物には使えない可能性:建物の配線方式によっては対応していない
| 改善策 | 費用 | 期待度 | 難度 | 優先度 |
|---|---|---|---|---|
| ①ルーター設定改善 | 0円 | ★★☆ | 低 | 最初に試す |
| ②LANケーブル交換 | 1,000~3,000円 | ★★☆ | 低 | 2番目 |
| ③IPv6プロバイダ変更 | 実質0~3,000円 | ★★★★☆ | 中 | 強く推奨 |
| ④ホームルーター | 2,500~4,000円/月 | ★★★★☆ | 低 | ③で改善なし時 |
| ⑤光回線切り替え | 3,000~15,000円+工事費 | ★★★☆☆ | 高 | 最終手段 |
改善しないケースと対処法
残念ながら、どの対策を打っても改善しないケースも存在します。期待値を正しく持つことが大切です。
改善不能なケースの判定基準
- VDSL方式 + 100人以上の大型マンション:建物構造による制限で最大100Mbps。複数世帯で共有すれば実測は数Mbps~数十Mbps。個人の工夫では変えられない。
- LAN配線方式 + 古いCAT5e + 200戸超マンション:配線規格と人数の両方が制限要因。建物全体の配線刷新が必要(数百万円単位)
- 新築超高層マンション(100戸以上):竣工直後は一時的に混雑。数年で緩和される傾向だが、根本的解決は時間経過のみ。
改善不能な場合の対処法
対処法①:ホームルーター+Wi-Fi設定の最適化
建物構造が原因の場合、ホームルーター(au / SoftBank Air)が現実的な唯一の選択肢です。光回線を変えても改善しません。
対処法②:利用時間をずらす
夜間(20~23時)の利用を回避し、早朝(5~8時)や昼間(11~17時)に大容量通信(ファイルダウンロードなど)を実施する。
対処法③:キャッシュ・バッファの活用
動画は事前ダウンロード、オンラインゲームはオフラインモードで楽しむなど、リアルタイム通信に頼らない使い方にシフト。
💡 改善不能判定のまとめ
- 「VDSL + 大型マンション」なら、ホームルーター検討
- 配線規格が古ければ、建物全体の刷新か、ホームルーターが唯一の選択肢
- 時間帯による使い分けも現実的な対策
回線変更の判断基準
「結局、回線を変えるべき?」という最後の判断について、判定表を用意しました。
回線変更の判定表
| あなたの状況 | 現在の実測速度 | 推奨判断 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 光配線方式 + 在宅勤務なし | 10~30Mbps(夜間) | IPv6変更を最初に | プロバイダ変更で30~50%改善の可能性 |
| 光配線方式 + Zoom会議あり | 5~15Mbps(夜間) | IPv6変更 + ホームルーター検討 | 仕事の安定性が重要。バックアップが必須 |
| VDSL方式 + 全用途 | 5~50Mbps | ホームルーター推奨 | VDSL最大100Mbpsは変わらない。ホームルーターで回避 |
| LAN方式 + 老築マンション | 5~20Mbps | LANケーブル確認 → ホームルーター | 配線規格が古い可能性大 |
| 光配線方式 + IPv6済み | 30Mbps以上 | 変更不要 | 十分な速度。他に原因がある可能性(Wi-Fi干渉など) |
失敗を防ぐための確認チェック
回線変更を決断する前に、以下を必ず確認してください:
✅ 回線変更前の最終チェック
あなたのマンション回線、実はこのタイプかもしれません
「何をすべきか分からない」という場合は、まず配線方式を確認し、IPv6プロバイダへの変更から始めることをお勧めします。
最後に:マンション回線改善の完全ロードマップ
🎯 実施順序(最も効果的な順)
- Step 1(5分):有線で速度測定 → 実測値を記録
- Step 2(10分):管理会社に配線方式を確認 → VDSL/LAN/光配線を把握
- Step 3(0円):ルーター再起動・設置最適化 → 効果測定
- Step 4(3,000円程度):IPv6対応プロバイダに変更 → 1週間後、再度速度測定
- Step 5(2,500~4,000円/月):改善なければホームルーター導入 → トライアルで事前確認必須
- Step 6(最終判断):光回線全体の切り替え → 最初に⑤を試すべき
免責事項:本記事は一般的な情報提供目的です。個別の契約内容・建物仕様により、実際の改善効果は異なる場合があります。不明な点は、ご契約のプロバイダ・管理会社にお問い合わせください。

